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●私の考える整形外科医療とは


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患者主体の医療とは何でしょう?

整形外科ほど治療法の選択肢が多い診療科はありません。私は現在も順天堂浦安病院の整形外科症例検討会に参加していますが、ある症例の治療法をめぐって2〜3人の医師に意見を求めると全員が異なる意見を述べる事も珍しく有りません。その理由として病名やレントゲン所見で治療法が決まるのでは無く『どう云う状況でどのくらい困っているか』を基準に、その人の年齢、職業、性格や人生の価値観まで考慮して治療法を決めるという運動機能の回復を目指す整形外科の特色による物です。
「患者の自己決定権」これは正確な情報が与えられ病名や治療法の他、放置した場合の自然経過まで含めた説明と理解があって始めて成し遂げられるのです。
  当院の患者さんでも『前のところでは痛いところを触りもしなかった』とか『レントゲンの説明をしてくれなかった』とかの理由で自分の意志で転医してくる人がいます。私もできるかぎり解りやすく説明をするよう心がけていますが忙しい中でとても十分とは言えません。少しでもご自分の体について興味を持っていただきこのホームページを参考にして納得のいく医療を受けていただけたら幸いです。

何故、普通の<ぎっくり腰>なのにレントゲンを撮るのでしょう?


整形外科といっても《レントゲンのとれる接骨院》ぐらいのイメージしかないかもしれませんが理学療法、運動療法の他、投薬などの内科的治療、装具、関節注射、神経ブロックなどの専門的治療、さらに必要なら手術までを視野に入れて治療方針を決定する為にはレントゲンで加齢現象の程度や骨粗鬆症の有無、姿勢なども見なければなりません。しびれなどの神経症状があれば診察だけでもある程度診断は可能ですが、腰椎分離症などではレントゲンを撮らないとなかなか診断をつけられません。
ご自分で『私は坐骨神経痛です』と診断して受診される方がいます。しかし坐骨神経痛は頭痛と同じで診断名では無く症状名です。頭痛の原因が脳腫瘍の場合もあれば風邪の場合もあります。同じように坐骨神経痛も椎間板ヘルニアの場合もあれば転移性の癌の場合もあります。当院でも『ただの腰痛症だと思って受診した人が肺癌の骨転移だった』とか、『数ヶ月間、接骨院に通っても治らないため当院でレントゲン撮影をしたら膝に骨肉腫(悪性腫瘍)が見つかった』等と云った症例を経験しています。
柔道整復(接骨院)や鍼灸などの東洋医学的治療、カイロプラクティク〔整体)などの治療でも症状が軽快する事は広く知られていますが一度、医師の診察を受けてからご自分にあった治療を受けられる事をお勧めします。

膝関節の水を抜くと癖になる?


関節液は関節の内で何が起こっているのか知らせてくれる大切な情報源です。中高年に多い変形性膝関節症で毎週膝から水を抜くような場合は必ずしも適切な治療とは言えませんが、痛みや腫れが強いときは診断のために関節液の確認が必要です。
関節液を調べて、混濁していれば炎症性の関節リウマチや偽痛風、化膿性関節炎などを疑い、黄色い透明な液体なら、あまり炎症の強くない変形性膝関節症や陳旧性の半月板損傷、さらに血液が溜まっていれば靱帯損傷や膝蓋骨脱臼、骨折などを考えます。
特にスポーツ外傷では20ml以上の血液が溜まっているときには前十字靭帯損傷の可能性が、また血液の中に脂肪が混じっているときはレントゲンで異常がなくても骨折の可能性があります。
癖になるという表現は正しくありません。炎症が治まらないときは再び水が溜まるのでそう感じるのですが、正常でも関節内には1〜2cc程度の水(関節液)があって、関節軟骨に栄養を与えたり、関節のスムーズな動きのための潤滑油のような役割をしています。
ただし注射をしなければ診断や治療ができないなどということはほとんどないので注射が苦手な人は主治医とよく相談してみるといいでしょう。

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